社員インタビュー

新しいことに取り組むことが自分に合っていた。

短大卒業後、大学病院で看護師をしていました。治験ついては、勤めていた病院でも行われていましたので知っていましたが、詳しくはありませんでした。そんな中、たまたま見た新聞にCRC(治験コーディネーター)の求人募集を見つけました。看護師時代には病棟や救急外来にいたこともあり、患者さんが亡くなる場面に何度も立ち会いました。その経験からか、新薬という新しい治療法の開発に携わることに興味を惹かれ、CRCに転職しました。
その後、看護師の資格を持っていても、CRCでは医療行為ができないことにジレンマを感じて看護師に戻ったこともあります。ですが結局はCRCに戻って、がん領域などさまざまな治験に携わってきました。看護師の仕事はルーティンワークも多く、逆にCRCは対応時間が不定期といった大変な部分もあるのですが、新しいことをするのが好きな自分にはCRCという仕事があっていたようです。そんな折、3Hから「訪問看護を使った在宅治験の立ち上げに力を貸してくれないか」という打診をいただきました。

日本で訪問看護を活用した在宅治験を実現。

以前、認知症に関する治験に携わっているとき、患者さんに来ていただくより、こちらから訪問することができないか考えたことがありました。認知症の患者さんは、施設に入所されている方も多く、治験のために通院していただくことが、ご本人や介護者の方にも大きな負担になります。当時は法律的にも治験のために訪問することができなかったので、もどかしさを感じていました。3Hから在宅治験を立ち上げたいと聞いて、とても先進的に感じました。 入社後は、在宅治験の立ち上げに携わり、2021年の5月に初めて、訪問看護ステーションを利用した在宅治験を実現しました。企業がマネジメントを行っての対応は、日本ではほぼ初めてだと思います。実現にはいろいろ苦労がありました。前例のないことをやっていたので、過去の事例や用意された答えもありません。管轄省庁など関係各所へ確認しながら、手探りで進めていく必要がありました。治験を行う医療施設や訪問看護ステーションも本当にそんなことができるのかと懐疑的な所がほとんどでした。特に医療は、徹底した安全確認の上で物事が進んでいきます。また、治験は病院で実施するものという固定観念もありました。そこを在宅治験でどう実施していくのか、一つひとつ説明し、各所から理解を得ながら実現にこぎつけることができました。

在宅治験は患者さんの負担軽減につながる。

今までにないことを実現しようとしていたので、大きなプレッシャーを感じていました。でも実際に在宅治験に参加した患者さんからは、「看護師さんが来てくれたのでとても助かった」という言葉をいただけました。この方のご自宅と医療施設は、県を跨ぐほど離れており、治験となると普段の診療よりも来院回数が増えます。さらに現在のようなコロナ禍では、感染リスクなどもありますから、患者さんには来院が大きな負担となります。こうしたリスクを低減できることは大きなメリットです。在宅での治験が増えていけば、認知症やALSなどの来院が難しい患者さんでも参加しやすくなると思います。
現在は、多数の在宅治験を実施していますが、今のところ、患者さんも含め、関係者からは、肯定的な意見ばかりです。とはいってもまだ道半ば。越えなければならないハードルも多いのが現状です。在宅治験に保守的な医療施設もまだまだ多いですが、いずれスタンダードな治験の一つになっていくと思っています。

日本で在宅治験を広げて行く。

在宅治験を実施するにあたり、具体的にどんな業務があるかというと、実施する医療施設の立ち上げや訪問看護ステーションの手配、訪問看護師のトレーニングなど多岐にわたります。医療施設に対して、どんなことをするのか細かく説明し、病院内の各セクションで必要な確認をしてもらいます。医療施設や患者さんのお住まいなどを考慮の上、対応可能な訪問看護師を手配。訪問看護師も治験については詳しくない方が殆どです。普段の訪問看護と行うことも変わるため、訪問治験に関する教育なども行います。
私自身、看護師として訪問診療を経験していたこともあり、訪問看護師の仕事も実際に見ていました。看護師や訪問診療、そしてCRCの経験や知識を在宅治験の立ち上げ業務に生かすことができました。この他にも在宅治験に必要な備品の手配などロジスティックス的な業務や治験の依頼者との調整もありますし、幅広く対応することが必要です。今後は、こうした在宅治験をマネジメントするノウハウをどんどん広げていきたいと思っています。今は、外資系の製薬企業や海外で在宅治験を実施しているパートナー企業とのやり取りも多いですが、内資系の製薬企業も積極的になって来ています。在宅治験の認知度を上げるための活動も始めており、在宅治験の普及を通して、参加する患者さんの負担軽減に貢献できればと思っています。

略歴
医学部附属の短大を卒業後、そのまま附属の大学病院へ就職。その後病院やクリニックを転職しながら看護師として勤務。看護師として、手術室、病棟、救急外来、一般外来、訪問診療などに従事。新聞広告で治験コーディネーター募集を見た事がきっかけで治験業界へ転職。治験コーディネーターとしてクリニックから大学病院まで、慢性疾患から急性期疾患、癌領域、小児から老年まで、数多くの治験に携わる。